Beloved  たいせつな        *5周年記念アンケート創作*












「んー…ここもいいですよね」


パンフレットを眺めながら、香穂子は楽しそうに呟く。








テーブルの上に広げられた大量のパンフレット。

所々に印の折り目がつけられている。

こうしてパンプレットを広げてから、どのくらい経ったのだろう。

あそこもいい、ここもいい…と、
香穂子はずっとパンフレットとにらめっこをしている。



つまらない。



こうして一緒にいるというのにパンフレットに夢中で、
言葉を交わすというよりは、香穂子の独り言に近い。

始めは悩むその姿も可愛く思っていたのだが、
それが2時間、3時間と続くと嫌になってくる。









「別にどこでもいいと思うがなぁ…」


ぼそりと呟くと、
香穂子は口を軽く尖らせて紘人に視線を向けた。


「よくないですっ!
一生に一度のことなんだから、じっくり決めたいじゃないですか!」


「じっくり、ね…」


じっくり決めすぎだろう。


その言葉は胸に止め、軽く溜息をつく。








ようやく二人の都合が合い、ゆっくり過ごせる時間が出来たのだ。

それに、記念すべき大切な日にもなる。

香穂子がじっくりと決めたい理由もわかる。








「そういう紘人さんはどこに行きたいんですか?」


どこか尖った言い方。


ご機嫌を損ねてしまったようだ。


「あー…そうだな…」


これは答えなくてはまずい。


どこでもいい、などともう一度言ったものなら、
どうなるかわかったものではない。








しばらくの沈黙の後。








「温泉、とか…?」








言った後に、しまった…と思った。


我ながら親父くさい。


いくらなんでも渋すぎるかもしれない。


香穂子はきょとんとこちらを見つめている。


「温泉、ですか…」


それもいいですね!


思わぬ言葉を呟き、香穂子はうんうんと頷いた。


「普段海外にいることが多いし、
ゆっくり温泉で過ごすっていうのも渋いけどいいかも…」


ぱぁっと明るくなる香穂子の顔。


考え付かなくて言ったことではあったが、どうやら機嫌が直ったようだ。








ここがいい、あそこがいい…と検討した結果、
ようやく意見がまとまった。



客室に露天風呂が付いた温泉宿。



長時間検討しただけあり、香穂子も満足のようだった。








「楽しみですね」


長時間パンフレットとにらめっこをしたせいで若干疲れてはいるが、
香穂子の嬉しげな笑顔を見ると、それは吹っ飛んでしまう。


「そうだな」


お前さんの浴衣姿も。


言葉にすると、香穂子の頬がほんのりと紅潮する。


そんな姿もやはり愛おしくて。


紘人はクスクスと笑みを零しながら、その身体を抱き寄せた。


「紘人さん?」


「…お前さんを補給中」


腕の中にすっぽりとその身体を収め、呟く。


そんな紘人の様子に、香穂子も笑みを零した。








可愛い新妻との新婚旅行。

露天風呂付きの客室で二人きりとは、楽しくなりそうだ。



そんなことを思いながら、紘人は腕の中の温もりを堪能していた。





















なんとなく、二人は忙しそうだからすぐに新婚旅行に行けなそう。
海外を公演で周ってそうなので、旅行は国内にすればいいと思う。
温泉でいちゃいちゃすればいいと思う。
っていう妄想なお話でしたw



















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