月夜  つきよ    *ちょっぴり艶風味*












腕の中で寝息を立てる温もり。

この鼓動が、経正を安心させる。

自分が生きていること…これが現であることを、感じさせてくれる。

何度この腕に抱いても足りない。

この少女のいろんな顔を見るたびに、もっともっと欲しくなる。








その寝顔があまりに愛おしくて、そっとその額に口付けを落とす。


くすぐったそうに身じろぎをするが、起きる気配はない。


ふいに、経正は窓から木漏れ日のように差し込む淡い光を放つ月を見上げた。








この少女によって浄化を願った日も、同じような月夜だった。

同じ月を見上げながら、自分は還ったはずだった。



『目が覚めてもそこにあなたはいなくて…辛かった…!』



彼女の世界で再会した時、
瞳にいっぱいの涙を溜めて、彼女はそう言った。

自分がどれだけ彼女を悲しませてしまったのか。

それを知るのには、そのたった一言で充分だった。








「つねまさ、さん…?」


ふいに気づくと、望美が眠たそうに目を擦りながらこちらを見つめていた。


「ああ…すみません。起こしてしまいましたね」


「ううん。月を…見てたの?」


「ええ。…あちらの世界で貴女に逢う時は、いつもこんな月夜でした」


「…うん」


懐かしむように…だがどこか悲しげな笑みを見せると、
望美は擦り寄るように経正の胸に顔を埋めた。


その身体を抱き寄せれば、ふわりと甘い香りが鼻腔を掠める。


「寒くはないですか?」


「うん。あったかい…」


吐息がかかるほどに近い距離。


この微笑みが、胸を熱くする。


「…月夜は、嫌いだったけど…好きです」








あなたを封印した日も、こんな月夜だったから。









「良い想い出も、悲しい想い出もあるから」








「…でも、私はここにいます。貴女の傍に…」


そっと、その唇に口付けを落とす。


その悲しみも全て拭い取るように。


「ん…っ…ぅ…」


角度を変え、何度も何度も口付ける。








この熱をもっと感じたくて。








「…っ、経正さん…っ」


長い口付けの後にようやく唇を解放すると、
望美は頬を高潮させ、微かに潤んだ瞳を経正に向けた。


経正はふわりと笑みを浮かべると、その耳元に唇を寄せる。








もう一度、貴女を感じても良いですか?








その唇から返答を聴く前に、経正はもう一度口付けを落とした。



















兄上の甘め創作ですw
ラストはただのエロオヤジになった感が否めません(汗)



















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