ぎこちないキス  ぎこちないきす












敦盛さんは、ちゃんとここにいるよ」


そう言って、望美は敦盛の手を握り締める。






その存在を確かめるように。






「…清盛には感謝してるんです。あなたを、怨霊としてでも蘇らせてくれた事…」


瞳に涙を滲ませながら、望美は敦盛の瞳をしっかりと見つめる。






    だって、あなたと出逢う事が出来たから。






「神子…」


「…消えるなんて、言ってしまわないで…。傍に…いてください…」


堪え切れなかった雫が、望美の頬を伝い落ちる。


その涙を、敦盛は指で優しく拭い取った。


「私は…いつも貴女を泣かせてばかりだな…」


どこか自嘲にも似た笑みを浮かべながら、敦盛は望美の身体を抱きしめた。






その腕の温もりが、優しくて…愛おしい。






「私が…泣き虫だから…」


「…いや、貴女は強い女(ひと)だ。強くて、優しくて…」






こんなにも暖かい。






不意に合わせた敦盛の瞳が優しくて、望美ははにかんだ笑みを見せる。


「あの…神子…」






口付けをしても、良いだろうか?






どこか照れながら、敦盛はそっと囁いた。


そんな質問をする敦盛が可愛らしくて、望美は頬を紅潮させながらこくりと頷いた。






唇が重なる。






どこか不器用で、優しくて、ぎこちない敦盛の口付け。

それは、ほんの一瞬で。






敦盛は少し俯くが、再び望美の瞳を真っ直ぐに見つめる。






このまま、貴女を奪っても良いだろうか?






望美の唇は、返事を紡ぐ前に敦盛の唇で塞がれた。


それは、甘くて、深くて、優しい口付け。




















↑お気に召しましたら、
ポチっとお願いしますv