時間  じかん












     
敦盛さんが好きです。





貴女のその笑顔も、

その優しさも、

私は好きだった。





だが。





貴女は、尊い女(ひと)だから。





私には、その勇気はなかった。

貴女を、この手に抱き締める勇気が。





私は、いつか消えてしまうから。



















「敦盛さん…」


私の瞳をしっかりと捕らえたその瞳には、涙が滲んでいる。


「…息災で、神子」


必死に笑みを見せ、私は貴女を見つめた。






神子。

きっとこの先、もう二度と逢うことはない。

私の…最愛の女(ひと)。






白龍の逆鱗が放つ眩い光が、貴女を包む。






行ってしまう。

そう思った、その時だった。






ふわり。






眩い光は消え、優しいぬくもりが私の身体を包み込んだ。


「なぜ…」


目の前の新緑色の瞳は涙で濡れていて、私は思わずその涙をそっと拭い取る。


「神子…」


「私は…敦盛さんと一緒にいたい…。それが、私の幸せだから…」






      あなたが、好きなんです。






再び紡がれる、その言の葉。


嬉しくて…だがどこか苦しくて、敦盛は口を噤む。


「…私が嫌いなら、そう言って下さい。でも、そうじゃないなら…あなたの傍に居たいんです…」


ぎゅっと、貴女の腕に力がこもる。


愛おしくて、抱き締めてしまいそうになる。






だが、このまま抱き締めてしまったら…このまま貴女を受け入れてしまったら、
私はきっと…貴女を悲しませてしまう。



そう、思っているのに…私は無意識のうちに貴女を抱き締めていた。






「嫌ってなど…いるはずがない。私は、こんなにも…」






      貴女を愛しく想っている。





私は、雫が溢れるその目元にそっと口付けを落とす。


「…すまない。また…貴女を泣かせてしまったな」


「敦盛さんのせいじゃないです。私が…泣き虫だから…」


「神子、私は…」


「傍に居させてください。いつか、その時が来るまで…」


貴女は優しく微笑み、私をまっすぐと見つめた。






貴女の優しい微笑みは、私の心を癒してくれる。

貴女の優しい言葉は、私の胸を熱くする。





私はそっと笑みを浮かべ、貴女の唇に口付けを落とした。















その時は、明日かもしれない。

一年後かもしれないし、もっと先かもしれない。





愛しい神子。

その時が訪れるまでは、どうか…私だけの神子で        




















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