願い ねがい −敦盛Side―
静かな夜。
美しい月の夜は笛を奏でたくなる。
敦盛は、望美と出逢った時のことを思い出していた。
見ず知らずの自分を、望美は敵であると知りながら匿ってくれた。
心美しく、そして強い女(ひと)。
思えば、再会した時も望美は自分を救ってくれたのだ。
自分はいつも望美に救われてばかりだと、敦盛は思う。
望美のために出来る事。
八葉として共に戦うと決めたあの時から、敦盛はずっと探していた。
だが、怨霊のこの身では…出来る事は無いのかもしれない。
「神子…」
月の光を浴びながら、敦盛は笛を奏でる。
望美の役に立ちたい。
心でそう呟いた時だった。
敦盛は、突然温もりに包まれた。
「神…神子…?」
突然望美に抱き締められ、敦盛は目を丸くする。
「…ごめんなさい。でも、敦盛さんが消えちゃいそうな…そんな気がして…」
望美は不安そうに、今にも泣きそうな瞳で敦盛を見つめる。
清らかな神子である望美。
本当は、怨霊であるこの身で触れてはいけないとわかっている。
だが。
少しでもその悲しみを取り除いてあげたくて、敦盛は望美のその身体を抱き締めた。
「…大丈夫だ。私は…ここにいる。神子の傍に…」
ふわりと、敦盛は微笑む。
腕の中の温もりが…とても愛おしい。
腕の中の少女が…愛おしくて仕方が無い。
許されるのならば、共に過ごしたい。
いつか、この身が消える…その時まで。
敦盛は、そっと月に願いを込める。
月よ。
どうか、この女(ひと)が…ずっと幸福でありますように 。
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