こえ












「ん〜…」


てくてくと縁を歩きながら、望美は小さく息を吐いた。






この所、気温はぐっと下がり、一気に冷え込んできた。

平泉の冬には慣れてきたとは言え、やはり寒い。

動いていれば少しは身体が温まるかと思って毎日のように出かけて歩いていたのだが、
それが間違いだったのかもしれない。



頭が重い。








視界がぐらりと揺れた瞬間だった。


目の前に現れた障害にぶつかった望美は、その反動で縁から落ちそうになるが、
その身体は暖かい腕に抱き留められた。


「…このような場所をふらふら歩くな」


「や…やすひら、さん…?」


怒っているような呆れているような、そんな顔。


だが、そんな泰衡の姿にほっとして、思わず身体の力が抜ける。


再び泰衡に抱き留められる形になって、額にひやりとしたものが当てられた。


「…熱があるな」


小さなため息と共に、望美の身体がひょいと抱き上げられる。


「あの…」


「…いいから大人しくしていろ」


望美を一瞥すると、泰衡はすたすたと歩き始めた。


その温もりが気持ちよくて、望美はゆっくりと目を閉じた。








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「ん…」


ふいに目を覚ますと、そこには見慣れた天井があった。


「…目が覚めたか?」


「泰衡…さん…?」


すぐ傍にいる泰衡が、眉間に皺を寄せながらこちらを見つめている。








ふと、記憶を辿ってみる。

確か自分は縁を歩いていて。

泰衡にぶつかって、抱き留められて。

そのまま部屋に運ばれた…気がする。








「…ずっと、ここにいてくれたんですか?」


申し訳なさそうにその顔を覗き込むと、
泰衡は小さなため息を零しながらふいと顔をそらした。


周りをよく見るとすでに陽は落ちている。


望美の目が覚めるまでの長い時間、泰衡はこうして傍についていてくれたのだ。


そのことがなんだか嬉しくて、思わず笑みが浮かぶ。


「ありがとうございます…」


「…そう思うなら、早く治すことだ」


「心配、ですか?」


少しだけ悪戯気に笑みを浮かべると、泰衡は再び大きくため息をついた。


「金の相手をする者がいなくなる。…それだけだ」


そっけない言葉。


だが、その瞳はとても優しい。


「早く治しますね。泰衡さんを心配させてしまったから」


「………」


ますます深くなる眉間の皺。


照れ隠しで見せるその表情がまた嬉しくて、望美はその皺にそっと触れる。


「跡…付いちゃいますよ?」


「…病人は黙っていろ」


その手を優しく掴むと、泰衡は望美の唇を奪いように口付けた。


「ん…」


吐息がかかるほどの近い距離。


すぐ傍にある泰衡の顔に、なんだか恥ずかしくなる。


「…風邪、うつっちゃいますよ…?」


「そう思うなら、早く治せ」


瞳の奥はとても真剣で、優しくて。


「…はい」


望美はにっこりと微笑み、もう一度泰衡の口付けを受け止めた。



















誰か私の病を治してください。
ってことで原因不明の体調不良(っていうかただの風邪が長引いただけ)に悩まされながら書いたお話。
「貴女→お前」になった後は基本的に甘めな泰望創作です(笑)
まあわかりやすく言い直すと、ただのバカップルなお話ですなw



















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