願わくば…  ねがわくば…












「ここにいたんですね」


寝所にてようやく泰衡を見つけ、望美はにっこりと微笑む。


一人きりで、開いた戸の向こう側に見える月を眺めている泰衡。


望美は静かに泰衡の隣へと腰掛けた。


「あっちに戻らなくていいんですか?」


「…構わんさ。俺がいなくとも、宴に影響は無かろう。それよりも…」


ゆっくりと、望美に視線を合わせる。


「お前は戻った方が良いのではないか?」


「いいんです。泰衡さんと一緒にいたいから…」


にっこりともう一度微笑み、望美はその肩に寄り添った。






長かった戦いの日々。

そして巡り逢った最愛の人。



出逢ってから3度目の春。

桜が舞い散るこの季節に、望美と泰衡は祝言を挙げた。

宴には、八葉であった仲間たちが神子を祝福しにやってきてくれた。

そのことがとても幸せで、嬉しくて…暖かい。






「邪魔だったら、私のこと払いのけてもいいですからね」


苦笑する望美の肩を、泰衡はそっと抱き寄せた。


その腕はとても暖かくて、ほっとする。


「丁度良い。少し肌寒いと思っていたからな」


「…素直じゃない」


望美は、仕方なさそうに…だが嬉しそうにを浮かべ、その身を委ねた。






少し意地っ張りで、おまけに意地が悪くて。

子供みたいな部分もあって、実はかなり嫉妬深くて。

でも、本当は優しくて…熱い人。

全てひっくるめて、この人が愛おしい、と…そう思う。






「泰衡さん」


「…なんだ?」


耳元に残る、優しい声。


「…大好きですからね?」


望美はぽそりと呟いた。


「これからも、ずっとずっと…大好きです」


まっすぐと泰衡を見つめ、素直な想いを言の葉にする。






何年先も、こうして隣にいられたら良い…とそう思う。

何年先も、泰衡と共に過ごせたら良い…と。






「…手を」


「え…?」


不意にぽそりと呟かれた言葉。


望美は不思議そうに首を傾げる。


「…左の手を」


「こう…ですか?」


何が何だかわからずに、
望美は言われた通り、左手を差し出す。


すると、泰衡は静かにその手を取り、その細い薬指にそっと口付けを落とした。


「あ、あの…っ」


唇が一瞬触れただけ。


それだけのことだが、何だか恥ずかしくて頬が熱くなる。


「…お前の世界では、婚儀の際に『指輪』をはめるのだろう?」


その代わりだ…と、そう言って微笑む泰衡。


それはとても穏やかな優しい微笑みで。


まっすぐで真剣なその瞳に、望美は思わず言葉を失ってしまう。






「この命ある限り…いや、この命尽きようとも、お前の傍にいよう」






守り、愛し続ける。






そんな泰衡の言葉に、望美の瞳から涙が零れ落ちた。

この想いが嬉しくて、幸せで。






「や、やだな…何で…」


とめどなく溢れ続ける涙。


その手を引かれ、ふわりと抱き寄せられる。


泰衡の胸の中は暖かくて、安心する。


望美はそっと、その背に腕を回した。








暖かくて…優しい、泰衡の腕の中。

どんなに苦しくても、この温もりにいつも救われてきた。

いつだって、この胸は望美を優しく受け止めてくれる




ここが、望美の帰る場所。




どこにいても、何をしていても。

どんなに忙しくても。

望美のいるこの空間が…泰衡の居場所になれますように。




そっと、腕の中で願いを込めた。



















はい、結婚しました(笑)
なんとなく…銀みたく指に口付けちゃう泰衡さんを書きたかったわけですが…ガラじゃねえな(笑)
アラモ3のメッセにて思ったものを書いたのですが、全然関係なくなった…ね…(笑)
「一蓮托生」と言う言葉がありますよね。この二人は、まさしくこんな感じです(ムリヤリ…)

甘めに、でも何となくちょびっとだけ切なめにv
そんな創作になってたらいいな…(遠い目)



















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