大人な子供  おとななこども












初めて逢った時から、ずっと気になっていた事がある。

初めはずっと、不機嫌だからなのだろう…とそう思っていたのだが、
最近、それは長年の癖であったということがわかった。

一度気にすると気になって仕方がなくて、
どうしたら治るのだろう…とそう思うようになった。










泰衡は隣からあからさまな視線を感じながらも、
それを無視するように書に目を通す。

それでも望美はめげず、泰衡をじっと見つめ続ける。






泰衡の眉間に寄せられたシワ。






これが、望美がずっと気になってきたものだ。

不機嫌な時も、そうでない時にも寄せられる。

癖になってしまっているのかもしれないが、とても気になるのだ。

皺を寄せていない時の方が少ないのではないかとも思う。






そんなシワを見ると、どうしてもアレがやりたくなる。






しばらく泰衡を見つめていた望美は、
不意に悪戯気な笑みを見せるとそれを行動に移した。


中指を親指で押さえ、まるで影絵の狐のような形を作る。


そして、加減をしながら泰衡の眉間にデコピンをしてみる。






「だ…っ…!」






その力は思いのほか強すぎたようで、
泰衡は声にならない声を上げて額を押さえ込んだ。


望美の中指もジンジン痛む。


「……神子殿…」


あからさまに怒っている、低い声。


望美は中指を押さえながら苦笑を見せる。


「あ、あははは…ちょっと…強すぎたかな〜なんて…」






無言で向けられる紺碧の瞳が…かなり怖い。

これは、かなり怒っている。






「だ…だって、ずっと眉間にシワが寄ってるんですもん! すごく気になって、それで…」


ごめんなさい…と泰衡の顔を見上げると、眉間はくっきりと指で弾かれた跡が残っている。


「…何がしたいんだ、貴女は…」


「だって…ずっとシワ寄せてたら、跡がついちゃいますよ。まだ若いのに…」


望美の言葉を聞いた泰衡は、更に深く眉間にシワを寄せて大きくため息をついた。






望美としては、一応心配して言っているのだが…どうも逆効果のようだった。






呆れた様子で、泰衡はこめかみを押さえる。


「…仕事の邪魔をしたいだけなら、出て行って頂きたいのだが」


「ごめんなさい…邪魔したかったわけじゃないんです。…でも、邪魔しちゃってますよね…」


望美は、親に叱られた子供のようにしゅんと肩をすくめた。


構って欲しい…という気持ちは少しだけあったが、邪魔をしたかったわけではない。






再び「ごめんなさい…」と呟き、望美が立ち上がろうとしたときだった。






泰衡は望美の腕を掴み、そのまま腕の中へと強引に抱き寄せた。


それはまるで母が子を抱くような体勢で、少し恥ずかしくて…望美はほんのりと頬を紅潮させる。



「…本当に、手のかかる女(ひと)だ」


その言葉は溜め息交じりで、だが…どこか穏やかに微笑んでいるように見える。


その微笑みが嬉しくて、だが眉間に赤く残る跡が申し訳なくて、
望美はそっとその場所に触れる。


「ごめんなさい…痛かった、ですよね?」


「…かなりな」


「…ごめんなさい…でも…」






     眉間にシワ寄せてる泰衡さんも、私は好きですからね?






ぎゅっとしがみつくように、望美はその首に腕を回す。


「ただ…ずっと眉間にシワ寄せてたら、されなくてもいいような誤解もうけちゃうんじゃないかって…」






本当にそう思う。

実際、望美だって初めて逢った時は怖くて近づきにくい人だと思っていたのだ。

それはあながち間違いでもなかったかもしれないが、
泰衡は、本当は意外と嫉妬深くて…優しい人だということを知った。






「…構わん」


「どうしてですか?」


「貴女だけが俺を知っていれば、それで良い。他には…何も必要なかろう」






それってどういう意味ですか?






そう紡がれるはずの言の葉は、泰衡の熱い唇によって飲み込まれた。


「ん…っ…」






唇から零れる熱い吐息。






泰衡の口付けは、想像よりもずっと激しくて…でも優しくて、熱い。

これも、初めて逢った頃からは想像もつかなくて。






「ん…っ、泰衡さん…っ」


口付けからだけではない違う感じに望美は唇を離し、泰衡の瞳を覗き込んだ。


「何だ?」


「…この手は…なんでしょう?」


胸元に触れる泰衡の手を、じっと見つめる。


「構って欲しいのだろう?」


意地の悪そうな笑みに、望美の口元が思わず引きつる。


「…ひょっとしなくても、まだ怒ってます?」


「貴女のように子供ではないのでな。…怒りを引きずるほど、大人げのない男ではないつもりだが?」






    十分、怒ってるように見えますが。






などとは言えず、
苦笑しながらも、望美は再び落とされた口付けを静かに受け入れた。








それは甘くて、

やっぱり強引で、

でも優しい口付け       


















いや、十分大人気ないですよ、泰衡さん。

てことで、微エロ、微ギャグ!みたいな感じになりましたね(笑)でも、甘〜くなったんではないかとvv
いや、なんかタダのバカップルのようにも見えますが(爆笑)
たまにはいいですよね?(誰に聞いてるんだ…笑)

いや〜でも最後は泰衡がただのエロオヤジ化してる感じが否めませんな(笑)
ま、いっか☆(オイ)



















↑お気に召しましたら、ポチっとお願いしますv