約束の地へ  やくそくのちへ

*このままでも大丈夫なように書いておりますが、
  『永久に咲く花』を閲覧後にお読みになることをオススメします*












心地のよい風が髪を靡かせる。

ふわりと広がる髪を掻揚げ、望美は感嘆の息を漏らした。






辺りに広がるのは、大きな桜の木々と風に乗って舞う花弁。






「綺麗…」


うっとりとその光景を見つめる。


傍らで、泰衡が穏やかな顔でその姿を眺めていた。


「…気に入ったか?」


「はいっ! とっても!」


心から嬉しそうな望美の笑顔に、泰衡の顔もほころぶ。






『私は帰ってきたよ。自分が、居るべき場所に…』






たった一人でこの地にいた泰衡の元に、望美はやってきた。

泰衡と共に生きる道を、彼女は選んでくれた。

あの時の感情を、今もまだ覚えている。






嬉しくて、暖かくて…まるで母のような。

言葉では表すことが出来ないような、不思議な気持ち。






「…ね、泰衡さん」


「なんだ?」


「やっと…果たせましたね」


ふわりと、望美は微笑む。






泰衡との運命が欲しくて、望美は時空を超えた。

泰衡との未来が欲しくて、望美はひたすら戦った。

泰衡との約束を果たしたくて。






「なんか…不思議な気持ち。約束してから2年も経っていないのに…
とってもとっても永かったような…そんな気がします」


「そうだな…」


そっと、望美の手が泰衡の手に重ねられる。


暖かい温もりが優しく包み込む。


「泰衡さんと見れて、ホントによかった…」






心から、本当にそう思う。






戦のない、平和な生活。

この平穏を手に入れるまでの時間は、
短い時間だったが…とても永い時間だった。

辛いことも、悲しいことも、
泰衡の隣にいたから乗り越えることが出来たのだ。






「望美…」


そっと泰衡は呟く。


「…この桜は、また来年も花を咲かせるだろう。
その次の年も、またその次の年も、ずっと…」


望美を見つめるその瞳はとても優しくて、暖かい。


「永久に…咲き続けるのだろう」


重なった望美の手に、泰衡はそっと口付けを落とす。


「お前もまた、俺の中で…永久に咲き続ける」


穏やかに微笑む泰衡に、望美は思わず頬を赤らめた。






暖かい陽だまりの中に咲いた、一輪の花。

とても優しくて、どんなことにも立ち向かう…強い花。






「や…泰衡さん、どうしたんですか?」


恥ずかしそうに顔を赤らめながら慌てふためく望美の姿に、泰衡は笑みを浮かべる。


「来年も、その先もずっと…俺と共に、桜を見に来てくれるか?」


静かに紡がれる言の葉。


望美は驚いたように…だがすぐに嬉しそうに微笑み、頷いた。


「もちろんです。私も、同じ気持ちだから…」


微笑む望美に、泰衡は小指を立ててそっと近づけた。


「…約束、だ」


悪戯気に笑む泰衡に、望美は驚いたように目を丸くする。






『私の世界では、こうして小指同士を繋いで約束を立てるんです』






ここがまだ雪で覆われている時に、望美が教えたこと。

泰衡は、そのことも覚えてくれていたのだ。






「はい。約束…です」


そっとその指に己の指を絡め、望美は泰衡の胸に顔を埋める。


それに答えるように泰衡がその身体を抱き締めた。











一つ一つ重ねた想い。

紡がれた二人の未来。

巡り巡る季節を駆け抜けて、想いは輝き続ける。

地図なき道の先に、

辿り着いたのは      約束の地。


永久(とわ)に花が咲き続ける、約束の地         



















ようやく連載が完結です!!
これだけでもわかるようになってますが、『永久に咲く花』をお読み頂いてると、よりいいのでは…と思います!

まあわかる人にはわかってしまうでしょうが、タイトルは完全に2HEARTSの歌からですな(笑)
でも、この歌はこの二人にピッタリだと思います。
とっても好きな歌なのですが、歌詞がとても…!

ようやく約束を果たせたので、本当に満足です!
よかったよかったv



















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