安らぎ  やすらぎ


*このお話は『永久の花』をお読みになってからお読みください/18禁注意*












静かな夜。



泰衡は灯りのもとで一人、物思いに耽っていた。

正式な引継ぎやら何やらと立て込んでしまい、
ここ一ヶ月ほど、望美とまともに顔を合わせていない。

多少は逢える時間はあった。






しかし。






望美とまともに顔を合わせたところで、どうしたら良いのかがわからなかった。






望美は、泰衡に色々なものを与えてくれる。

安らぎや温もり、今までに感じたことのないようなものを。






だが、自分は?

自分が望美に与えることが出来るものは何も持っていない。

ただ、彼女を傷つけることしかできない。






泰衡は、そう思っていた。






「泰衡さん?」


不意に声が聞こえ、泰衡は我に帰る。


心地よく、胸に響くこの声は。


「神子殿…?」


「良かった…まだ起きてたんですね」


胸を撫で下ろし、望美は泰衡の隣に腰掛ける。


「このような時分に…何か用か?」


「えっと…」






      夜這いです。






望美の言葉を聞き、泰衡はぴたりと動きを止める。


その姿に、望美は悪戯気にクスクスと微笑んだ。


「なんて、嘘ですよ。本気にしました?」


「…くだらん」


泰衡は眉間にシワを寄せ、不意と顔を逸らす。


「…でも、半分は本気だったり」


望美はポソリと呟いた。


突然口調が変わり、泰衡はその姿に視線を移す。


「あれから…一ヶ月ですよ? なのに、全然逢えないし…」


泣きそうになっているのを我慢しているのだろう。


少しずつ、望美の声がか細くなっていく。


その姿を見ていると、この腕に抱き締めてしまいそうになる。






だが。






「神子殿、俺は…」


「神子じゃ…ないです」


真っ直ぐと泰衡を見据える望美の瞳には、うっすらと涙が滲んでいる。


「もう…神子じゃない。それに…」


ゆっくりと、その唇は告げる。






    泰衡さんには、名前で呼んでほしいんです。






望美は、必死に想いを伝えている。








あの時。

望美が約束を果たしにやってきたあの時、泰衡は伸ばされたこの手を取った。

望美と共に歩いていくと…そう決めたはずだった。



だが。



泰衡の中にはまだ迷いがあった。

本当に、それでいいのか…と。








望美は、そんな泰衡の迷いに気づいていたのだろう。


「…泰衡さん」


不意に逆鱗を目に前に置き、
望美は泰衡の手元に置いてあった小柄を手にした。


「神子殿…!?」


「…見ててください。私が、選んだ道…」


望美は鞘に納めたままの小柄を逆鱗の上にかざす。






あれは、白龍の命なんです。






以前、望美はそう言っていた。






「…ごめんね。ありがとう…」


ぽそりと呟くと、小さく震えるその手は思い切り振り落とされた。


ぱきん…と音を立て、半透明の結晶が辺りに飛び散る。


「神子殿…」


「…もう、元の世界には戻らない。そう決めたんです」


そう気丈に振舞う望美の瞳には、再び涙が滲む。


「…とんだうつけ者だ」






この少女は、己の世界も捨てて…それでもこの自分を選ぶと言う。

どこまでも真っ直ぐで、純粋で…愛おしい。






ふわりと、泰衡は望美の身体を抱き締める。

久しぶりの温もりは、
すぐに壊れてしまうのではないかと思うほどに華奢で。

だが、柔らかく…暖かい。






「…私、そんなに弱くないよ」


広い背に腕を回し、望美はその胸に顔を埋める。


「きっとね、泰衡さんが思うより…ずっと頑丈だから…」






     もっと強く抱き締めて?






泰衡は、その腕に力を込めた。

望美の全てを、求めるように。






どちらかともなく、唇がそっと重ねられる。


一方的だったあの時とは違う、互いを求め合う口付け。


「ふ…っ」


しがみつく様に望美は泰衡の衣を強く握り締める。






絡み合う、二人の吐息。

甘く、優しく、重なり合う。






ようやく唇が離れると、望美の顔はほのかに紅潮していた。


その身体を泰衡はそっと横たえる。


「泰衡、さん…」


「…拒むのなら、今のうちに言え」


「嫌じゃ、ないです…」


望美は泰衡の首へと腕を回し、そっと囁く。










         だから、抱いてください。












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「……んっ…ぁ…」


身体の輪郭をなぞる様に花弁を散らせながら、
泰衡は望美の身体を舐めあげていく。


灯りだけで照らされた部屋でもはっきりとわかるほどにその身体は白くて、
本当に源氏の神子と呼ばれていた少女なのか…と思うほどであった。


その唇が腹部から下肢へと移動すると、望美はびくんと身体を震わせた。


「…っぁ…だ、め…っ」


両膝を掴んで足を開かせて顕になった白い腿に、
泰衡はそっと唇を寄せる。


何度も何度も口付けては、
印を刻みながら奥へと下を這わせると、淡い茂みに到達した。


先ほどからの愛撫や口付けによって、そこからはすでに蜜が零れ始めている。


「…感じていたんだな」


「あんまり…見ないでください…っ」


頬を紅潮させながら、熱い吐息を漏らす望美。


初めて見るその姿が、また愛おしい。


泰衡はそこに唇を寄せ、蜜が溢れ出す秘部へと熱い舌を埋める。


「ひゃ…ぁっ…ん…っ」


顔を押しのけようと延ばされるその手には構わず、泰衡は蜜を口に含みながら、
指でそっと柔らかな花弁を押し広げ、その入り口にゆっくりと埋めた。


蜜と唾液ですっかり濡れた秘部は、すんなりと指を受け入れる。


「あぁっ…ん…っ」






初めての時は、
痛みで何も感じることのなかった不思議な感覚。






指を出し入れしていくと、
次第に望美の声がより甘く、より激しく響いた。


くちゅ、くちゅ…と卑猥な水音を立てながら、
徐々に指を増やし出し入れしていく。


「ふ…ぁっ……は…ぁん…っ」






もう傷つけぬように。

優しく、甘く慣らしていく。






「ゃすひら、さ…っ…もぅ…っぁ…」


ふるふると快感に身を震わせ、
せがむような望美は艶めいた甘い瞳で泰衡を見つめた。


「へ…き、だから…っ」


泰衡は望美の上に覆いかぶさるように体勢を整えると、
その身体をそっと抱き締める。


「…入れるぞ」


ちゅ…と耳朶に口付けを落として自身を秘部にあてがうと、
ゆっくりと腰を沈める。


少しの圧迫感はあるものの、
十分に慣らしたそこは大した痛みもなく泰衡の熱を受け入れた。


「く…っん…」


「…っ、神子殿…」


全てが埋まり、泰衡が心配げに頬を軽く撫ぜると、
望美は嬉しそうに笑みを浮かべた。


「へいき、です…。泰衡さん、熱い…」


ぎゅっと泰衡の首に腕を回し、望美は大きく息を吐く。


「…貴女の中も、熱い」


瞼に、頬に、唇に口付けを落とし、ゆっくりと腰を揺らし始める。


「…っぁ…あんっ…」


互いから溢れる蜜は卑猥な音を立て、
その感覚はゆっくりと、確実に、身体に刻まれていく。


浅かった感覚は徐々に深くなり、次第に泰衡の質量も増していった。


泰衡の動きに合わせ、望美の声は一際高く、甘くなる。


「やす、ひらさ…っ、もぅ…っぁ…」


何度か最奥を突き上げられるうちに望美の声は一層高くなり、
泰衡の熱はきつくなるほど下腹部を圧迫していた。


「…っぁ、だめ…っ、あっ、あぁぁぁっ…っ」


今までに経験したことがないほどに甘い声を漏らし、望美は高みを極めた。


びくんびくんと秘部が痙攣するのを感じ、泰衡は眉間にシワを寄せる。


「…っ、望美…っ…」


愛しい温もりの名を囁き息を詰まらせると、その中に己の熱を放った。















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まだ余韻で火照っている泰衡の胸に、望美はそっと頬を寄せている。


「…身体は、どうだ」


眠りかけた望美の耳元で、そっと囁く。


「大丈夫です。頑丈、だから…」


にっこりと微笑み、泰衡を見つめた。


「…名前、呼んでくれた」


本当に、心から嬉しそうに、望美は再び笑む。


泰衡は望美の髪を優しく撫ぜ、その髪に唇を寄せた。


「…距離を置くことで、貴女が傷つくなら…俺はもう遠慮はしない」






       お前と共に行きよう。






そっと紡がれた言の葉。

その言葉が、何よりも嬉しい。






泰衡が『お前』と呼ぶのは、望美が『神子』から卒業した証。

泰衡のこの言葉は、望美の全てを…想いを受け入れてくれた証。






あまりに嬉しくて泣き出してしまいそうな望美に降ってきたのは、

甘い言の葉と、

甘い口付け。





















『永久の花』のあとがきにも書いてみましたが、やっと泰衡の続編を書いてみました!18禁です!(笑)
いや〜ムツカシイ!(苦笑)でもですね、続編かけて楽しかったですよ〜vv
長かったですが、これで真の完結です!

やっすーはずっと「貴女」とか「神子殿」とかって言ってるじゃないですか。
だから、何度も「お前」とか「望美」とかって呼ばせたくなかったんですよね。最後に一回だけ…とか。












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