陽光 ひかり *ちょっと艶風味*
君を、愛していた。
舞い散る桜の中で、自分は盾となった。
彼女の声を聴きながら。
決して言葉には出さなかった想いを、最期に紡いだのだ。
あの笑顔を守るために。
意識を失う瞬間、自分を包み込む彼女の姿を見た。
「……っっ!」
朝を告げる眩い光を浴び、忍人は目を覚ました。
「…夢、か…」
ゆっくりと身体を起こし、髪をかき上げる。
妙に、リアルな夢だった。
彼女を狙う輩から守るためにあの刀の力を使い、
自分は命を落とす。
桜を見よう、とそう誓った約束も果たせぬままに。
まるで本当に経験したかのように、胸が苦しい。
ふいに、忍人は視線を落とす。
赤子のように、無邪気に静かな寝息を立てる少女。
その姿に、忍人は心を落ち着かせる。
自分は、生きているのだ。
この少女の温もりが、それを感じさせてくれる。
「…千尋…」
そっと、その額に口付けを落とす。
「ん…」
むにゃ…と、ゆっくり千尋は瞳を開ける。
光が眩しいのか片目を閉じたまま、
忍人の姿を捕らえると、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「おはよう…ございます」
「おはよう、千尋。…すまない。起こしてしまったな」
「いつも寝坊してるから、たまにはこれくらいでいいんです」
ゆっくり身体を起こし、千尋は忍人の胸に身体を預けた。
当たり前のようにその身体を腕の中に閉じ込め、
その耳元に口付ける。
「…その原因の半分は俺にある」
いつも無理をさせているからな。
耳元でそう囁くと、みるみる千尋の顔が紅潮していく。
初々しいその反応が、可愛らしくて仕方がない。
王となっても、今までと変わらない千尋。
変わったのは、むしろ自分かもしれない。
王となる少女にこんな想いを抱くことは許されない…と、
以前は自分から距離を置いていた。
この少女は、常に前を向き…まっすぐに向き合っていたのに。
「そ、そろそろ支度しないと…」
頬を赤らめたまま腕の中からすり抜けようとするその身体を、
忍人はもう一度抱き締め、強引に口付ける。
「…っ…ん…」
長い口付け。
ようやく唇が離されると、千尋は艶めいた吐息を零した。
「おしひと、さん…」
「…もう少しだけ、君の温もりを感じていたい」
忍人は、そっとその胸元に顔を埋める。
まるで太陽のように眩く、暖かい少女。
今はただ、この温もりを感じる幸福に浸りたい。
そう思いながら、
忍人はもう一度、その唇に口付けを落とした。
今回はちと甘めに仕上げてみました!
いや〜それでも、どうしても切なくなりがち。。。。
もっと甘いのができるように頑張ります!
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