太陽のように  ひかりのように












ふう…と大きく息を吐き、千尋は大きく伸びをする。


ようやく、今日の政務も終了した。


窓の外を見ればまだ太陽の光が差していて、
思ったよりも早く政務が終わったことに気付く。


「まだ時間も早うございますから、散歩などをされても宜しいかと…」


「そうですね。籠ってばっかりっていうのもなんだし、そうしようかな」


忍人を誘って散歩をするのもいいかもしれない。


そう思ってふわりと微笑んで立ち上がった瞬間、
千尋は部屋にやってくる人影を発見した。


「あ、忍人さん!」


逢いたいと思った人物が現れ、思わず笑みがこぼれた。


千尋の笑みとは対照的に、忍人の眉間には軽く皺が寄せられる。


「陛下、政務中は『葛城将軍』と…」


「政務は終わりました! ね、道臣さん?」


忍人が最後まで言葉を紡ぐ前に、それを遮るように言葉を紡いだ。


隣にいた道臣は、その様子にくすくすと微笑みながら頷く。


「ええ。散歩でもいかがかと陛下にお勧めしていたところです」


「それで、忍人さんはどうしたんですか?」


ふわりと微笑み、忍人の顔を覗き込む。


「あぁ…これを…」


そういって忍人が差し出したのは、籠一杯に摘まれた野いちごだった。


「足往が君に…と。休憩中にでも、と思ったのだが…」


「うわぁ…美味しそう」


籠から漂う甘い香りに、思わず笑みがこぼれる。


嬉しそうに微笑む千尋につられたのか、忍人にも笑みが浮かんでいる。


「忍人さん、もしこれから時間があったら…一緒に散歩に出かけませんか?」








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「甘くて美味しい〜」


野いちごを頬張り、千尋は満面の笑みを浮かべる。


甘酸っぱさが口の中に広がって、幸せな気持ちになる。


「ふふ…足往にはちゃんとお礼を言わないと」


「…そうだな…」


ふわりと微笑み、忍人も呟く。








心地よい風が吹く中庭に、忍人と二人。

中つ国を復興させるために奮闘していた千尋と、
そんな王を守るためにあちこちへ遠征していた忍人。

離れている時間が長い分、こうして二人で過ごす時間がとても幸せに感じられる。








「…髪が…」


ふと忍人が呟き、千尋は首をかしげる。


「髪が、伸びたな」


「あ…はい。まだ、あの頃よりは短いですけど…」


忍人の長い指がさらりと髪をすり抜け、千尋はふわりと微笑む。


胸の辺りまで伸びた髪。


この世界に戻ってきた頃よりは短いが、随分と長くなった。


「長くても短くても…美しさは変わらない」


この長さは、君が頑張った時間だ。


ふわりと笑みながら呟く忍人。


その微笑みが…言葉が優しくて、思わず頬が熱くなる。


「この国も、随分と落ち着いた。君が頑張ったからだ」


「私だけじゃないです。忍人さんも、国の人も…皆が頑張ってくれたから」


にこりと微笑み、大きく深呼吸をする。


皆の頑張りでようやくここまできたのだと、本当にそう思う。


自分だけの力では、きっと何も出来なかった。


「…君が王だから、頑張れるのだろう」


ふと呟かれる言葉。


「君が君だから、皆…王を慕っている。俺も…そうだ」


「忍人さん…」


「君が王で、良かった」


忍人の言葉に、千尋の瞳からは思わず涙が零れていた。








初めて逢ったときからずっと厳しかった忍人。

他人にとても厳しくて、でも自分にはそれ以上に厳しい人。

そんな忍人が、言葉にしてくれている。

それが嬉しくてたまらない。








「千尋…」


忍人を困らせてしまう。


そう思って、千尋は慌てて涙を拭う。


「ご…ごめんなさい。嬉しくて…」


袖で涙を拭いながら息を整えるように大きく息を吐き、
笑みを見せる。


「でも、これが始まりなんです。
これから、もっともっとこの国を良くしていきたい…」


「ああ、そうだな。…その隣に、いつまでもいられたらいいと…そう思う」


優しく呟く忍人の言葉。


聞き間違いなのではないかと、思わず千尋は忍人の顔を見上げた。


「あ、あの…」


まっすぐと、真剣な瞳が向けられる。


「君は王で、俺一人が独占していい人ではない。それはわかっている」


だが。


「俺は、君の隣にいたい。君の隣で、君の造る国を見守りたい」








それは、とても穏やかに優しくて。

静かに降り積もる言の葉。








「俺は…君に妻問いしても許されるだろうか?」








忍人らしい、静かな告白。



この人に逢えて、千尋は人を恋しく想う気持ちを知った。

それは甘くて、時には苦しくて…切なくて。

でもすごく幸せな気持ち。








「はい」


ふわりと微笑み頷く千尋に、
忍人は安堵したように大きく息を吐き、笑みを浮かべた。


「そうか…」


「…いつ言ってくれるかなって、そう思ってました」


だって、女の子からプロポーズするのは…ちょっと恥ずかしいから。


『プロポーズ』の意味がわかっているのかいないのか、
千尋の言葉に忍人は苦笑を漏らす。


「ふふ…狭井君にも報告しなければいけませんね」


「ああ…もう伝えてある」


「え…?」


「…君は、受けてくれると思っていたから」


さらりと呟く忍人。








用意周到なのか、自信があるだけなのか。

きっと、両方なのだろう。

そんな忍人の行動の早さに、思わず笑みが漏れる。



こうして忍人にプロポーズされたことが嬉しくて。

そんな自信満々な忍人がなんだか可笑しくて。








「…ずっと、隣にいてくださいね」


「ああ、約束しよう。
…中つ国の若き王に、永久の忠誠を。そして…」








     芦原千尋に、永久の愛を。








優しい言の葉と共に落とされたのは、

優しくて、甘い口付け      

















プロポーズ編です!
忍人さんがプロポーズするときは、準備万端な気がします。
その分、気持ち的な面とか…色々時間かかってそうですが。
とりあえず、この二人には本当に幸せになってほしいです。
誰よりも…!
あ、補足として…妻問いは求婚です(念のため)
忍人さんはなんてプロポーズするかなぁと考えた末、これにしました。
問いかけちゃう辺り、忍人らしいかなぁと思ってみましたが、そんな感じが出てれば幸いですw

というか、ひっそり特別出演を果たした道臣さん、キャラがわからなすぎて困りました(爆笑)
もう一回遙か4をプレイしなくてはいけないかもしれません(汗)














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