花弁  かべん












    君を愛していた。






式典の最中、
頭の奥でそんな言葉が聞こえた。

それはとても遠く、優しく…切ない声。



その言葉が誰だったのか。



それを知るのに時間はかからなかった。






「どう…して…」


信じられない…信じたくない光景に、千尋は言葉を失った。


血に塗れた男の亡骸の傍らで、
桜の花弁に包まれながら横たわる…愛しい人の姿。


そっと、その頬に触れる。


「暖かい…」


手のひらから伝わる彼の温もり。


彼の温もりは、いつだって心を癒してくれた。


安心をくれた。


どんなことでも頑張れる、勇気をくれた。


その温もりが、今はこんなにも苦しい。


涙が頬を伝う。


途絶えてしまったこの鼓動が、
もうこの人は目覚めることはないのだと…そう伝える。






破魂刀。

あの刀は、命を削ることで力を発揮する。

その事を知っていながらも、彼は破魂刀を振るい続けた。



千尋を守るために。



何よりも罪深いのは、
彼に破魂刀を振るわせ続けてしまった自分の無力さなのだ。






「忍人、さん…」


そっと、まだ温もりの残るその身体を抱き締める。


「桜が…綺麗ですよ…?」


涙に濡れた瞳で、笑みを見せる。


「忍人さん…私ね、言いそびれてたことがあるんです」


震える指先で、その唇をなぞる。






時には厳しく、不器用に優しさを紡いでくれた唇。

もう、開かれることはない。






あなたが好きです。
この世の誰よりも、何よりも      






想いを込めて、千尋は唇を重ねる。






叶う事のなかった約束。

それを静かに叶える様に、

優しく暖かい風に乗って、花弁がはらはらと舞い散った。

















うお〜!
究極に切ないネタになってしまいました…(汗)
でも、あのEDの後の千尋はどんなかんじだったんだろう?って思ったら、
こんな感じだったんですね。
ついつい切なくなるな〜、忍人(笑)














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