君の未来図  きみのみらいず












君のために生きてみたい。








彼女に告げた言葉。

それは心からの言葉だった。



葦原千尋のために。

中つ国の王のために。



生きてみたいと…いや、生きていたいと、そう思ったのだ。








「今日は良い散歩日和ですね」


まるで花のように微笑む千尋。








あと何回、この笑顔を見ることができるのだろう。








「もし身体が辛くなったら言ってくださいね?」


後ろ手を組みながら千尋はくるりと振り返る。


「ああ。…そういう君こそ、足元には注意してくれ」


君は危なっかしいのだから。


そう口に出す前に、石に軽く躓いた千尋は均衡を崩してしまった。


慌ててその身体を腕に抱き留める。


「…言った傍から何をしているんだ」


「ごめんなさい…」


忍人の腕に包まれながら、千尋は苦笑を漏らす。


腕の中に感じる千尋の温もり。


それがこんなにも暖かくて、幸せで。








もっとその温もりを感じていたくて。

もっと深く温もりを感じたくて。








忍人は全身で温もりを感じるように、
己の胸にその身体を抱き寄せた。


「忍人さん…?」


頬を赤く染め、千尋がこちらを見つめる。








あとどのくらい、共に時間を過ごせるのだろう。

あとどのくらい、この温もりを感じていられるのだろう。



まだ、この笑顔を見ていたい。

まだ、この身体を抱き締めていたい。



それが叶わぬ願いであったとしても。








「…俺は、身体だけでなく…心も弱っているようだな」


自嘲気味に呟いた言葉。


千尋は一瞬泣き出してしまいそうな顔を見せたが、
それを誤魔化すように、忍人の胸に顔を埋めるとその背に腕を回した。


「…傍に…いますから」


搾り出すように紡がれた言葉。


千尋は顔を上げ、忍人の瞳を真っ直ぐと見つめる。


「私じゃ何も出来ないかもしれないけれど、傍にいます」








どこまでも真っ直ぐで強い瞳。

中つ国の王となる少女は、強く…優しい。



千尋は、きっと素晴らしい王となるだろう。

その優しさと強さで、民を導いていくのだ。

その隣に、きっと自分はいないけれど。








「…君がここにいる。それだけで…充分だ」


「忍人さん…」








一秒でも構わない。

少しでも長く、生きていたい。



そして、一秒でも長くこの少女の笑顔が続くように。

ただ、この少女がずっと笑顔でいられるように。






そんな願いを込めながら、

忍人はその唇に口付けを落とした。

















いつものパターンで完結です(笑)
あ〜やっぱり切ないの書くと胸が苦しくなる。。。
遙か十年祭の勢いそのままにやってみましたが、やっぱり忍人には幸せになって欲しい。

今回のテーマ(←あったのかそんなん)としましては、ちょっとだけ弱気な忍人ですな。
BGMとしては、「明日がくるなら」かな(笑)














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