約束の花  やくそくのはな












「ねえ、どうかな? ほんっとに変じゃない?」


くるりとその場で回って見せて、千尋は首を傾げる。


「ええ。とても似合っていますよ、千尋」


「そうだな。これが俺の為だったらもっと良かったんだが」


にっこりと微笑む風早と、残念そうに肩を落とすアシュヴィン。


アシュヴィンのため息には気づかない振りをして、千尋はにっこりと微笑む。






常世の国の皇であるアシュヴィンの命を受け、
中つ国の王である千尋のもとに友好の証として火雷と呼ばれた将が遣わされる事になった。



王の婿として。



もちろん、友好の証などというのは名目上。

千尋は今日という婚礼の儀を心待ちにしていた。






無垢な白い衣を身に纏って幸せそうに微笑む千尋を、
皆暖かく見つめていた。


「そろそろサティの準備が終わる頃だ。俺たちは先に行っている」


「熱々な姿を見せられるのはうんざりだしね」


冷めたような那岐の言葉。


それでもどこか穏やかな表情をしていて、千尋も思わず笑みがこぼれる。


「…支度は出来たのか?」


背後から聴こえる優しい声に、千尋はゆっくりと振り返る。


同じような白い衣装を身に纏い佇むナーサティヤ。


その姿があまりにも綺麗で、思わず千尋は言葉を失う。


「どうした?」


「あ…えっと、その…」


思わず見惚れていた。


などとは面と向かって言えなくて、口篭ってしまう。


他に言葉を捜していると、ふいに甘い香りが漂った。


「この香り…」


この香りを、千尋は知っている。


根宮の居室に飾られていた、名も知らぬ白い花。


ナーサティヤは、持っていたその花をそっと千尋に差し出す。


「いつか、もう一度お前に逢えたなら…渡そうと思っていた」


「…すごく、嬉しい…」


「お前には、この花が良く似合う」


今までに見たことのない、穏やかな笑み。


それがなんだか恥ずかしくて…嬉しくて。


千尋の頬が赤く染まる。


「あ、あの…っ」


恥ずかしさを誤魔化すように、無理やり言葉を紡ぐ。


「なんだ?」


「ずっと訊きたかったんだけど、この花ってなんていう名前なの?」


ああ…とそっと呟くと、
ナーサティヤはふわりと微笑み、す…と顔を寄せた。


吐息がかかるほどに近い距離。


鼓動の速さが聴こえてしまうのではないかと言うほどに近くて、
頬がさらに熱くなる。


「その花は…」


耳元に寄せられる唇。






その花の名は        






囁かれた言葉と共に、

甘い温もりが千尋の唇を包み込んだ。

















甘々サティ創作の完成です☆
でも意外と甘くなかったかな??
サティを中つ国に嫁がせちゃいました(爆笑)
でもこういう幸せな未来があってもいいのではないかとw
アシュにサティて呼ばせたかったので登場してもらいました(笑)














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