孤影  こえい         *七章若干捏造/「溺れる」ゆき視点?/18禁












ふと目覚めれば、晋作はどこか苦しそうにこちらを見つめていた。


いや、見つめているといっても、
その瞳にゆきの姿が映っているわけではないのだろう


こちらを見ていても、どこか遠いところを見ている。


そんな感じだ。


「高杉、さん…?」


ふとゆきが声をかければ、晋作は我に返ったように言葉を紡いだ。


「…起きたのか」


「はい…」


気だるい身体をゆっくりを起こし、その頬に触れてみる。


熱はない。


「どこか、痛みますか?」


「…なぜそんなことを訊く?」


「だって、とても辛そうな顔をしているから…」


体調が悪いのではないなら、傷が痛むのだろうか。


そう思ったが、違うようだった。


けれども、ゆきは晋作の見せた驚いたような瞳を見逃さなかった。


それは見間違いだったのかと思うほどに一瞬で。


すぐにいつもの晋作に戻っている。


「…なんでもない。気のせいだろう」


やんわりと、手を離される。


それはまるで、これ以上詮索するなと言う拒絶にも見えて。


チクリと胸が痛む。


「それなら、いいんですけど…」


思わず泣き出してしまいそうになるのを堪え、ゆきは笑顔を見せる。










わかっている。



晋作は、自分に気を許しているわけではないのだ。

晋作が必要としているのは、神子としての力だけ。

そのために、自分を傍においているのだろう。

それをわかっていて、自分はこうして晋作に甘えている。



傍にいたくて。

少しでも、近くにいたくて。










「辛いのは、お前の方ではないのか?」


ふいに抱き寄せられ、耳元に熱を感じる。


ふとかかる熱い吐息に、身体が熱くなる。


「…あんなに泣いていただろう?」


耳元に触れる唇の感覚に、ゆきは思わず身体を震わせた。


「…っ、高杉さん…っ」


「…あれだけ愛したというのに、まだ足りぬと見える」


とさりと、身体を倒される。


晋作の身体が覆いかぶさるのと同時に、口付けられた。


息継ぎの間さえ許してはくれないほどの、貪るような激しい口付け。


一度は収まっていたはずの熱が、再び訪れる。


「…っ…ふ…っ」


するりと、晋作の手が下肢へと伸ばされた。


焦らすように腿を撫ぜるその指。


触れられるだけで、熱く蕩けてしまいそうだった。


淡い茂みへと潜り込むその瞬間。


「…っは…待っ、て…っ」


唇から逃れたゆきは、やんわりとその指を制する。


精一杯の力を出して晋作のその身体を仰向けに寝かせると、
その上に跨る。


「蓮水…っ?」


突然のゆきの行動に晋作も驚いたようで、その顔を見上げた。


そんな晋作の様子も気にせず、
下肢に感じる熱い昂りにゆきはゆっくりと腰を落とす。


「っん…く…っ」










つい先刻まで受け入れていたとはいえ、
濡れただけのそこは、昂りを受け入れるにはまだ辛い。

それでも、晋作を感じたかった。



何度でも、何度でも。



壊れても構わないほどに、晋作が欲しかった。

苦しみよりも何よりも、自分の中が晋作で満たされる。

その喜びが勝ったのだ。










何の準備もなく昂りを受け入れたゆきの額には、
じんわりと汗が浮かんでいた。


「っ  ! 無茶を…っ、するな…っ」


ようやく全てを受け入れたゆきの頬に、ふわりと優しい手が伸ばされた。


優しくしないで欲しい。


垣間見える晋作の優しさが、ゆきには何よりも苦しかった。










こんなに吐息がかかるほどに近くにいるのに、遠い。

わかっていたことだけれど、切なくて。










こうして近くにいられることが嬉しいのに、胸が痛い。


思わず、泣き出してしまいそうで。


それを誤魔化すように、ゆきは自らの腰を揺らした。


「…っ…あ…っん…っ」










この瞬間だけは、自分を見ていてくれる。



心など望まない。

せめて、この身体だけでも繋がっていたい。

こうして吐息が交わるだけで。

それだけでいい。










「…っ…は…っ…たか、すぎ…さ…っ」


ただひたすらに晋作を求める。


「く…っ…蓮水…っ」


ふいに腰に手をかけられると、そのまま抱き寄せられた。


その行為がより深い場所へと導いて、ゆきの身体がびくりと跳ねる。


「や…っ…あぁぁ…っ」


ずんと下から突き上げられ、思わず高い声が出る。


「…っ…やぁ…っ…」


身体が痺れるような激しい刺激。


眩暈が起きそうなほどに、晋作を感じる。


「も…っ…だめ…っ」


何度も何度も繰り返される刺激に、ゆきは高みへと舞い上がる。










あなたが、すきです。










その言葉は胸に閉じ込めたまま、
ゆきはそのまま意識を手放した。

















「溺れる」の続編的な感じになりました。

なんとなく、好きだけど心を拒絶する晋作と、
好きゆえに心を殺すゆきちゃんって言うのを書きたかったのです。
すれ違う感じが好きというひねくれた子です(笑)















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