溺れる  おぼれる         *七章若干捏造/黒晋作注意/艶風味*












隣で静かに寝息を立てる少女。


その瞼には、微かに涙が滲んでいる。










この無垢な身体を初めて奪ったのは、いつの日だっただろう。



この長州を守るため。

その未来のため。



龍神の神子の持つ力が、どうしても必要だった。

そのために、
彼女の純真な心を…幼さの残るその身体を、利用したのだ。



彼女が、自分にどんな想いを抱いているかを知っていて。










「鬼畜…と呼ぶのだろうな」


嘲笑にも似た笑みを浮かべ、晋作はゆきの寝顔を見つめる。










龍神の神子が自分に溺れれば、離れることはない。

そうすれば、龍神の加護もこの手の内。

そう思っていた。



その心を知ってか知らずか、ゆきは晋作に懐いていた。

神子としての力を求めても、その身体を求めても、決して拒みはしない。

まるでそこに自分の価値を見出しているように。



計画通り、事は運んでいた。



それなのに。



その身体を求めれば求めるほど。

その力を求めれば求めるほど。



ずっとこの胸にあるもやは、濃さを増していく一方だった。。

ゆきに対するこの気持ちが何なのか、晋作にはわかっている。

いや、わかっていてもわかりたくはない。








「高杉、さん…?」


ふと聞こえる声。


ゆきはどこか心配そうにこちらを見つめていた。


「…起きたのか」


「はい…」


ゆっくりと身体を起こすと、ゆきは晋作にそっと手を伸ばした。


頬に触れる温もり。


この暖かさは、神子の力なのか。


それとも自分の抱いている、この感情のせいなのか。


「どこか、痛みますか?」


「…なぜそんなことを訊く?」


「だって、とても辛そうな顔をしているから…」


自分のことには鈍いのに、人のことになると途端に敏くなる。


己の気持ちを悟られたくなくて、晋作はその手をやんわりと離す。


「…なんでもない。気のせいだろう」


「それなら、いいんですけど…」


「辛いのは、お前の方ではないのか?」


すっと抱き寄せ、その耳元に唇を寄せる。


「…あんなに泣いていただろう?」


耳朶に口付けを落とすと、ゆきはびくりと身体を震わせた。


「…っ、高杉さん…っ」


「…あれだけ愛したというのに、まだ足りぬと見える」


その身体を倒して上に覆いかぶさり、その唇を貪る。










こんな想い、気付かなくていい。

未来を掴むため、修羅になると決めたのだから。



人を好きになどならない。

そう、決めている。

未来を掴むためには、そんな足枷は必要ない。



それなのに。



この柔らかい身体に溺れている。

この熱を、もっと感じたいとそう思っている。










「高杉、さん…っ」


すがるように自分を求めるその唇。


己の気持ちを誤魔化すように、晋作は激しい口付けを贈った。

















初高杉!
なのにこんなんですみません(汗)
なんとなく、こんなダークな感じを書きたかった…!
どこか、泰衡と同じ雰囲気を感じますな。















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