幸福
  しあわせ             *ちょい甘/少し切なめ*












「……っ」


びくりと身体を震わせ、不意に彼女が目を覚ます。


恐らく、また新たに傷が移ったのだろう。


痛みからか一瞬辛そうな瞳を見せるが、
それを見せないためか、それはすぐに笑みへと変わる。


「大丈夫……私は、平気だから」


必ず、彼女はそう言う。


移った無数の傷は痛むだろうに、彼女はいつも私に微笑みかける。








あの時、解呪を行っていれば良かったのではないか。



時々、ふと思ってしまう。

彼女は命を削ってまで私を求めてくれたというのに、
この姿を見る度に私の決意は揺らいでしまう。



私は、何と弱いのだろう。








「桜智さん…?」


私は、どんな顔をしていたのだろう。


気付けば、彼女が心配そうに私を見つめていた。


「…私が、望んだことだからね?」


私の心を見透かしているように、彼女が呟く。


「桜智さんがこうして傍にいてくれるから…だから、私は辛くないの」


「ゆきちゃん…」


ふわりと、花のように微笑む彼女。


「むしろ、桜智さんとずっと一緒にいられるから…得しちゃってる」


本当に、どこまでも彼女は優しい。


暖かく、私を包んでくれる。


「だから、桜智さんもそんな顔しないで?」


「ゆきちゃん…」


私に伸ばされたその手を、そっと包み込む。


「…必ず、私が守るよ…」


「…うん」


幸せそうに微笑む彼女。


その姿を見るだけで、私も幸せになる。








愛おしくて愛おしくて、たまらない。

言葉にしても足りないくらいに、君が好きだよ。








「…ね、桜智さん」


「なんだい…?」


「…私が眠るまで、こうして手を繋いでいてもいい?」


どこか恥ずかしげに言葉を紡ぐ彼女。


その姿もまた愛おしくて、胸が熱くなる。


「も…もちろんだよ。むしろ…私からお願いしたいくらいだ…」


些細なことしか出来ないけれど、少しでも彼女の苦痛が和らぐのなら。


「…嬉しい…」


もう一度花のように微笑むと、彼女はゆっくりと目を閉じた。








手から伝わる温もり。

決して、この手を離したりはしない。









彼女の愛おしい温もりを感じながら、
私はその寝顔をずっと見つめていた。

















とりあえず寝ようよ、桜智!
最後はさりげなく桜智っぽくしてみました!(笑)
というわけで、初桜智です!
ストーカーなのに可愛すぎてヤバイ…!!!
これで時空超えて桜智にあったときは本当に涙が出ました…!
切ない…!















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