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「アンジェ…?」


久しぶりの我が家に帰ってきたベルナールは、
リビングのソファーの端ですやすやと寝息を立てる妻の姿を発見した。






記者に戻ったベルナールは、仕事が忙しく家に戻れない日々が続いていた。

忙しいベルナールのために、
愛しい妻は差し入れを持って毎日のように新聞社まで足を運んでくれていたが、
ろくに話も出来ない。



その仕事もようやく一段落つき、一週間ぶりの帰宅。



やっとゆっくり過ごせる…と帰路を急いだのだが、夜中になってしまった。

普段なら妻が可愛い笑顔でドアを開けてベルナールを迎えてくれるのだが、
こんな時間なのだからもう眠ってしまっただろうと思っていた。






「こんな所で…」


仕方のない子だ…と、ベルナールは優しく微笑む。






久しぶりに見た、妻の寝顔。

幼い頃と全く変わらない。

無防備で、可愛くて…愛おしい。






アンジェリークの隣にそっと腰掛けたベルナールは、
その細い身体をふわりと包み込んだ。


「アンジェ、風邪を引くよ?」


白い頬にそっと口付けると、ベルナールは耳元で囁く。


その声で少し瞳を開いたアンジェリークがベルナールの姿を捉えると、
大きく瞳を見開いて慌てて身体を起こした。


「ベ…ベルナールさん…っ」


「おはよう、アンジェ」


アンジェリークのあまりの慌てように、ベルナールはくすくすと笑みを零す。


「もしかして…僕を待っててくれたのかな?」


「起きてようって思ってたのに、いつの間にか…」


ごめんなさい…と、アンジェリークは俯く。


そんな姿が可愛くて愛おしいくて…ベルナールは、肩を抱き寄せる。


ベルナールに身体を預けるたアンジェリークは、
大好きな夫の顔を見上げ嬉しそうに微笑んだ。


「ベルナールさん…お帰りなさい」


「ただいま、僕の可愛い奥さん」


愛しい妻に答えると、ベルナールはその桜色の唇をやんわりと奪う。


柔らかく暖かい、甘い唇。


唇を離すと、アンジェリークの白い頬はほんのり紅潮していた。 






望んでいた、暖かい…大切なもの。

この少女は、幸福(しあわせ)も安らぎも与えてくれる。






「…いいものだな」


「え…?」


「帰りを待ってくれる人がいるっていうのは…」


顔を覗き込むように自分を見つめるアンジェリークの額に、
ベルナールはこつんと己の額を合わせた。


アンジェリークは顔を真っ赤に染めると、驚いて目をぱちぱちさせる。


その姿が愛おしくて、
どうしていいかわからずに宙を彷徨うアンジェリークの手をベルナールはそっと握りしめた。


「大好きだよ…僕のアンジェ」


甘く優しく、ベルナールは囁く。




こんなにも、自分に笑顔を与えてくれる愛しい人。

与えてくれた分だけ…それ以上に、幸福と安らぎを与えたい。

心からそう思える。






やっと手に入れた、大切な場所。

愛しい…アンジェリーク           














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