02.足音 銀×望美 / 甘々
てく てく てく てく。
てく てく てく てく。
少し早く歩く私の後ろを、あなたは必死に追いかける。
その姿がとても愛おしくて…嬉しくて、自然と笑みが零れる。
「銀ってば…っ」
不意に呼び止められ、私は足を止めて振り返る。
どうやら、少し速く歩きすぎてしまったようだ。
私からかなり離れた所で、
あなたは子供のように頬を膨らませて私を見つめている。
「あ…歩くの速い…っ」
息を切らせ、あなたはその場にしゃがみ込んだ。
「申し訳ございません」
さすがにやりすぎてしまった…と、私は苦笑しながらあなたのもとへと向かった。
片膝を地につき、視線を並べる。
「あまりにも神子様が可愛らしかったものですから」
にっこりと笑み、私は手を差し出す。
私の言葉を聞いたあなたの頬が、みるみる赤く染まっていく。
「ま…またそんなこと言って…っ」
私の手を取り、二人同時に立ち上がる。
剣を持たぬあなたは、まるで野に咲く可憐な花のよう。
その花を愛でるのが私だけならばいいのに…と、ついそのようなことを思ってしまう。
この手を、いつまでも離したくはない、と。
「し…銀? あの、手が…」
立ち上がったというのに一向に手を放す気配のない私を、
あなたは困惑気味に見上げる。
手から伝わる、あなたの温もり。
このまま感じていたい。
「お嫌でしょうか?」
「い…嫌ってことはないけど、でも…」
恥ずかしいよ…と、あなたは頬を更に赤く染めていく。
私に向けられる、恥じらいから潤んだ瞳。
可愛らしくて…愛おしくて、たまらない。
私は、やんわりとその桜色の唇を奪う。
「し…っ」
突然の口付けに驚いたあなたは、口をパクパクとさせて目を見開く。
柔らかくて、甘い唇。
再びにっこり笑むと、私はしっかりとあなたの手を握り締める。
参りましょう、神子様。
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