05.移り香 弁慶独白?
ふわり。
不意に擦れ違った貴女から、香りが風に乗って運ばれる。
貴女のものではない、別の誰かの香り。
望美さん。
僕は、思わず貴女を呼び止める。
「何ですか?」
貴女はいつもと同じ笑顔を僕に向ける。
今、誰といたのですか?
誰と過ごしていたのですか?
思わずそう訊きたくなる。
貴女が僕以外の誰かと過ごすのも、
その瞳に僕以外の誰かを映すのも、
耐えられない。
誰にも渡したくなくて、僕はその身体を抱き締めた。
「弁慶さん…っ?」
貴女は頬を紅潮させる。
慌てるその姿も可愛らしくて、愛おしい。
その瞳に映すのも、その笑顔を向けるのも、僕だけでいい。
だから。
僕のこと以外考えられないように、
僕のこと以外見えないように、
その唇に、そっと口付けを落とした。
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