13.鼓動     譲×望美 / 甘々












とくん とくん。






望美は、譲の胸に耳を当てる。


「またですか、先輩?」


仕方の無い人だな…と微笑んだ譲は、そっと望美の身体を抱き締める。






とくん とくん。






望美はこれを聴くと安心するのだ。

優しく響く、譲の鼓動。



時空を越え、望美はやっと譲と共に過ごせる運命を探し出した。

やっと巡り逢えた温もりに、望美は身を委ねる。



傍にいるのが当たり前になっていて、近くにありすぎて気付かなかった。

それは、失ってみて…初めて気付く、かけがえのない大切なもの。






「譲君はね、私の…酸素なんだ」


「酸素…ですか?」


なぜそこに酸素が出てくるのか…と、譲は首を傾げる。


「譲君がいないと、生きていけないから…」



望美はそっと顔をあげ、譲の顔を見据える。







譲がいなくなった後、望美はまるで抜け殻のようだった。

もういないのだとわかっていても、信じたくなくてその姿を探す。



もう一度、逢いたくて。



やっと触れられたこの温もりを、もう離したくはない。

もう、失くしたくはない。






「譲君が、好きだから」


望美はえへっと悪戯気に笑むと、譲の頬にキスをした。


思いがけない出来事に、譲の顔が見る見る赤くなっていく。


そんな譲の顔を見て、望美は譲の頬を指でつんとつついた。


「真っ赤だよ?」


「せ…先輩っ」


からかわないでください…と、譲は顔を逸らす。






自分は恥ずかしいことをさらりと言うくせに、
自分が言われるとすごく照れてしまう。


そんなやりとりも、そんな譲も、とても大切で愛しいと…そう思う。








譲と過ごす甘い時間。

それは、かけがえのない…甘い幸福                  

















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