15.特効薬 泰衡×望美 / 甘々・少しギャグ?
「…これは何だ?」
望美から差し出された椀を、泰衡は怪訝そうに見つめる。
椀の中で怪しく光を反射させているのは、いかにも不味そうな緑色の液体。
望美が弁慶からもらってきたものだ。
「風邪によく効く薬だそうですよ」
にっこりと、望美は微笑む。
「余計な…お世話でしたか?」
いつまでも眉間にシワを寄せたままの泰衡の様子に、
望美の顔が一瞬にして曇った。
「いや…」
そういうわけではない…と否定はするが、
やはりコレを飲む気にはなれない。
弁慶が泰衡のために調合した薬は、決まって飲めるものではなかった。
というよりも、嫌がらせのように故意的に苦く調合されているのだ。
その事を知らない望美は、じゃあ飲んでください…と目を輝かせている。
「…仕方がない」
小さくため息をつくと、意を決して椀の中の薬を一気に飲み干した。
すると。
ありえないほどの苦味と不味さに、泰衡は激しくむせ返った。
「や…泰衡さんっ、大丈夫ですか!?」
その様子に慌てた望美は、泰衡の背をさする。
大丈夫ではない…と言いたい所だが、声も出せない。
しばらく望美が背をさすり続けると、泰衡はようやく呼吸を落ち着けた。
「大丈夫ですか?」
「…いや」
やはりやつは全く変わっていないな…と、泰衡は不機嫌そうにぼそりと呟く。
あまりの激しい不味さに、熱も吹き飛びそうである。
「ごめんなさい…私が無理やり飲ませたから…」
望美はしゅんと肩を落とす。
「悪いと思うなら…」
泰衡は望美の身体を抱き寄せると、その耳元で囁いた。
神子殿の唇で、口直しさせてもらおうか。
「な…っ」
言葉を聞いた望美は頬を赤らめ困惑した瞳で泰衡を見つめるが、
仕方ない…と目を閉じ、泰衡の唇にキスをした。
一瞬触れただけのキス。
泰衡は、顔を真っ赤にしながら顔を逸らす望美を見て笑みを見せる。
「上出来だよ、神子殿」
これは褒美だ。
再び望美の身体を抱き寄せると、泰衡は甘いキスを落とした。
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