CRESCENDO     ベルナール×アンジェ / 切ない













とても華奢な身体。

その背中には、どれだけの重い使命を背負っているのだろう。

今まで、これ程に自分の無力さを痛感したことはない。



出来ることなら、隣でこの少女を守りたい。

この少女を…大切なものを守る力が欲しい。








「ベルナールさん…?」


心配げにこちらを覗き込む顔に、
ベルナールは彼女に心配をさせまいと笑顔を作った。


「ごめんごめん。
君があまりにもチャーミングだったから見惚れてしまったよ」


ベルナールの言葉に、アンジェリークの頬が赤く染まる。


「ベ、ベルナールさんっ!」


赤くなった頬を膨らませるその姿が、
また可愛らしくて…愛おしくてたまらない。


ベルナールは、思わずその身体を抱き締めていた。


「本当だよ? …拗ねた顔も、笑顔も、全部」


耳元で、そっと囁く。








仕草、表情。

アンジェリークの全てを焼き付けていたい。



例えこの地に平和が訪れても、
この少女は地上へは戻ってこないかもしれない。

あの大きな翼を広げ、遠い所へと旅立ってしまうかもしれない。



そう思うと不安でたまらないのだ。








「君が…好きだよ、アンジェ」








だから、必ず戻ってきて欲しい。

この腕の中へ。



女王の卵であるアンジェリークには、言えなかった。

この世界を救える、唯一の存在だから。








「ベルナールさん…」


そっと、ベルナールの背に暖かい腕が回された。


「…私、行ってきます。ニクスさんを…世界を救うために」


向けられたその瞳はとても強く、凛としていて。


その瞳は『女王』のものだった。


ベルナールはやんわりと腕を解き、その空色の髪をさらりと撫ぜた。


「…うん、行っておいで。君なら出来るよ」


「ふふ…ベルナールさんにそう言ってもらえると、
本当に何でも出来そうな気がします」


無邪気な笑みを見せると、
アンジェリークは軽く背伸びをしてベルナールの頬にキスを落とした。


それは一瞬触れただけの軽いキス。


アンジェリークは頬をほんのりと赤らめながら、はにかんだ笑みを見せた。


「…行ってきます、ベルナールさん」


くるりとベルナールに背を向けると、
アンジェリークは星の船へと向かって歩き出した。








この背を追いかけることは出来ない。

この背を、呼び止めることも。








もしかしたら、もう二度と逢えないかもしれない。

その声を聴くことも、温もりを感じることも出来ないかもしれない。



それでも。



もしかしたら、この腕の中へ帰ってきてくれるかもしれない。

もう一度、あの笑顔に…温もりに、出逢えるかもしれない。








再び出会える奇跡を信じて。

ベルナールは旅立つ船を見守っていた。


















ベル兄編です!
意外とこの歌とベル兄って合ってる気がしてたのです。ってか、「Farewell Smile」と同じ匂いがする…!(笑)
ベル兄の場合は、不器用で伝えられないわけじゃないと思いますがね(笑)

ベル兄は、とにかくアンジェにベタ惚れな感じがするので、
好きで好きでたまらないんだけど、でもこんなことは言えない…だから見守ってるよ的なオーラを出したかったのですな。
多分、一番アンジェを女王にしたくないと思ってます。そんな気がする。
自分だけのアンジェでいて欲しいんだよね!(もういい加減痛い)














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