凛華の如く  りんかのごとく     ナーサティヤ×千尋 / 甘々













幾度となく通った宮。


謁見が終わり王の私室へと案内されたナーサティヤは、
一人息を吐いた。








中つ国の王となった千尋。

その多忙さは想像以上で、
再会してからも二人が逢える時間は数えるほどしかなかった。

それでも、ようやく訪れた平穏に幸福を感じていた。








「ごめんなさい、随分待たせてしまって…っ」


ばたばたと物音を立てながら息を切らせた千尋に、
ナーサティヤは軽く笑みを浮かべた。


「お前は王なのだから、仕方がなかろう」


「でも…その分、あなたと逢う時間が減ってしまうもの」


ナーサティヤの隣にすとんと腰掛ければ、
千尋は大きく深呼吸をして息を整え、にっこりと笑みをこぼした。


「今日は特に嬉しいことばっかりだったから、
早くあなたと話をしたかったの」


隣に暖かい温もりを感じながら、
ナーサティヤは千尋の言葉に笑みを見せる。








今日、中つ国を訪れたのは他でもない。

中つ国の王である千尋と、
常世の皇子であるナーサティヤとの婚姻話についてだった。








「…でも、本当に良かったの?」


ふいに向けられる心配げな瞳。


「何の話だ?」


「あなたが、中つ国に来るって…」


「そのことか…」








王である千尋は中つ国を離れられないため、
ナーサティヤが婿として中つ国へ来ること。

それが、婚姻の条件だった。



だが、一度は死んだも同然のこの身、
あの少女に捧げるのも良いかもしれない。

そう思ったのだ。








「常世を離れるのは寂しくない?」


心配げに覗き込む瞳。


ナーサティヤはその身体をふと抱き寄せる。


「お前の傍にいられるのならば、それで良い」


「ナ、ナーサティヤ…っ」


腕の中に閉じ込めた身体が仄かに熱を帯びる。


ふと視線を落とせば、その耳は赤く染まっていて。


その姿が愛おしくて、思わず笑みがこぼれた。








かつては敵であった姫。

幼き頃からもその真っ直ぐで凛とした姿は変わらない。



気高く、美しく…強く。

けれど、か弱く…脆い。



そんなこの少女を、守りたいと…今はそう思っている。

傍で支え、共にありたいと。








「…この命、お前に預けよう」


ふと、千尋がナーサティヤの顔を見上げる。


その瞳は、突然の言葉に驚いたようにきょとんとしていて。


ナーサティヤは目の前の唇に軽く口付けを落とすと、
その唇を耳へと近づけた。








「この命、お前に預けよう」








この胸の熱が彼女に届けばいい。

そう思いながら、
ナーサティヤは千尋の唇に再び口付けを落とした。


















サティの名前は長いなぁ…(しつこい)
いや〜テーマに沿ってない感が否めないことに(滝汗)

時期としては、あれですね。
サティ創作「約束の花」のちょっと前みたいな。
結婚が決まった辺りです。
サティは一回落ちたらとことん堕ちそうな気がします(笑)














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